1作目とは逆に総司がいない日を書いてみました。
平助目線ですが『沖×セイ』です。
でも『沖×セイ←藤』っぽいかも・・・
<人気者な一日>
「神谷さーん」
「あ、神谷くん」
「神谷はんっ」
「お!神谷」
なんだか今日はよく声をかけられるなぁ。
そんなことを思いながら、屯所内を駆け回る清三郎。
「神谷は人気者だからなぁ~」
「なに言ってるんですか、藤堂先生」
「そんなことないですよ」と言いながらも
頼まれた用事を次々とこなしていく様がまた
かわいいんだよなぁ、なんて思ってしまう。
「あんまりみんなの言うこと聞いてると疲れるよ」
「はぁ、いつもならこんなに声をかけられないのですが」
と言う神谷に
「まぁ今日は総司がいないからねぇ」と続けたら
「関係ないですよ、そんなの」と返されてしまった。
気がついてないんだね。
いつも二人でいる時、みんな声がかけづらいんだよ。
だってあまりにも神谷が幸せそうなんだもの。
そんなことを思っていたら
「神谷さぁ~ん、今帰りましたよ
お土産のお団子でも食べませんか?」
といつもの呼ぶ声が聞こえてきて
「先生!お帰りなさいっ」
さっきよりもかわいい顔でうれしそうに微笑んで
「お茶入れてきますね」と厨へ向かってしまった。
「いいね、総司は」
「なにがですか?」
--いつも神谷といれて--とは心の声。
「なんでもないよ」
「・・・変な藤堂さん」
と笑われたが「じゃあね」とそこを後にする。
総司は野暮天だからなぁ。
それが幸せなことにも気づいていないのかもしれない。
「いつまでも続くとは限らないのに」
つい口から出てしまった言葉に驚きつつも
この二人に限ってそんなことはないのかな
とも思う平助であった。
やっと間接的でない『沖×セイ』です。
話中のお店は、幕末も今の京都にもある老舗甘味処です。
がんばって調べました(笑)
しかし、甘々にしようと思ったのに暑さにやられ・・・
まぁ甘味なのである意味甘々ですが。
<甘味馬鹿一代>
京の冷水は本当に砂糖水だけですねぇ
江戸なら団子が入ってるのに・・・
冷やし甘酒がよかったかも
飲みながらもそんなことを思い、町を歩く。
今は夏。
この季節の京は暑くてたまらない。
しかし甘味のこととなると総司には苦にならないのだが
「鍵善の葛切りはいつも食べてるので甘露竹にしますか?」
それとも、笹屋伊織のどら焼・亀屋陸奥の松風
他にも、半兵衛の笹まきふ・與市兵衛のおにぎり菓子
かま八老舗の茶釜最中・緑寿庵清水の金平糖
植村義次の州浜---
と次々出てくる店の名に清三郎はぐったりとしていた。
「先生、暑いのですからせめてさっぱりとしたものがいいです」
「ではやはり葛切りですかねぇ」
そう言うと総司は祇園に向かって歩き出す。
しかし清三郎はもうクタクタだった。
--このあいだ暑さで倒れたのに、甘味の為なら大丈夫とは--
さすがというかなんというか、と呆れる始末。
いくら先生と一緒にいたいからとはいえ疲れたなぁ・・・
そう思ったところで遠くから
「トコロテンや、テンや」
と言う声が聞こえてきた。
「沖田せんせーい!心太(ところてん)にしませんか?」
先を行く総司に声をかけるが
「甘くないじゃないですか」と返され、びっくりとした清三郎。
「先生、京へいらしてから一度も食べたことがないんですか?」
「だって酸っぱいんですもん」
「京や大坂の心太は江戸と違うんですよ」
と言って薦めてはみるがあまり気乗りがしない様子である。
「いいから一度食べてみてください」
「嫌ですよぉ」
そんな押し問答を続けても埒があかないと思い
清三郎はさっさと買うと、日陰がある川辺へと向かっていく。
「鍵善の葛切り~」
まだ言っているのかと思いつつ、心太を渡すと
仕方なしに口をつける総司。
「どうですか?」
「あ、甘い?なんで?」
「江戸では酢醤油が当たり前ですものね」
「これ、黒蜜ですよね?」
「私もこちらにきて初めて食べた時に驚きました♪」
食べてくれてよかった、と一息つく清三郎。
「さっぱりとして、美味しいですね♪」
「でも先生が知らないとは意外でした」
「神谷さんのお陰でまた一つ、いいことを知りました」
--甘味馬鹿と思っていたけど、知らないこともあるんですねーー
そんなことを思われているとは知らず
冷水では江戸ですが、心太は京ですね
と心で思う総司であった。
短めです。ネタばれです。
コミックス第18巻を読んでぜひ書きたいと(笑)
セリフをまんま使おうとすると難しいことを実感しました。
<タラシ>
一番隊の隊務中。
きっと気づいてないのは本人と神谷ぐらいであろう。
絶対この人は天性のタラシだ・・・
「可愛くないですねー
いつからそんな性格ブスになったんでしょう この人は」
「男に向かって醜女(ブス)とはなんです!!」
「あれ?と思ったら存外可愛かった♪」
「なっ!?」
「なーんちゃって♪ ホラ笑ったらもっと可愛いですよ?」
「もーーーっ 馬鹿な事言ってないで巡察続けますよっ!!」
沖田先生って野暮天だと思ってたんだけど
本人が自覚したら土方副長にも勝てそうだ。
落として、軽く上げて、さらに上げる・・・か
心の手帳にメモしとこう。
と思ったものがいたに違いない巡察であった。
コミックスの色々な巻のセリフが入ってるので
ネタばれといえばネタばれですね。
珍しく結構書くのに時間がかかりました。
題の呪いだろうか(笑)
SSだとなんだかすんなりお話が書けていきます。
初めて書いてるんですけどね。漫画がいい作品だからかな?
<苦悩>
「もっと可愛いですよ・・って ふふっ」
前にもいろいろ言われたなぁ。
『考えてもみなかったですよ 離れるなんて』
『神谷さんは誰にも渡しません!!』
『大好きですよ 神谷さん』
「ふふふふふっ♪」
でも、結局その後に落とされるんだよね・・・
「はあ」
でもでもやっぱり
「ふふふ♪」
そこへ通りかかった沖田総司。
なにをひとりで百面相してるんでしょう?神谷さんは。
「神谷さん?」
「うへっ!お、沖田先生!!」
「なにをしているんですか?」
「いえっなんにもっ」
こんなこと考えてる時にくるなんてタイミングが悪い。
「顔、真っ赤ですよ」
「・・・」
「ますます真っ赤になった♪」
なにか隠し事でもあるんですかね。
「か~みやさんっ」
「だからなんでもないですって」
「教えてくださいよおー」
こんなこと話せないし、どうしたらいいんだろ。
「先生、なにか用事があったのでは?」
「はぐらかさすつもりですか?」
「そんなつもりじゃありません」
ダメか。う~ん。正直に話したらどうなるかな。
「先生のこと考えてました」
「私のことですか?」
私のことを考えていてなぜ百面相になるんでしょう?
さては・・・
「おいしい甘味屋さんを見つけたのに隠すつもりだったとか」
さすが、野暮天甘味馬鹿な発言である。
「・・・(はぁぁー)」
「ひどいですよお~!隠すなんてっ」
「隠してませんよ」
「じゃあなんなんです?」
「ご自分で考えてみてくださいっ!!」
なんでこんな人好きになったんだろ?
そう思いながら去ってく清三郎を
「私は考え事が苦手なんですよお~」
知ってるでしょ?神谷さん。
とあとを追いかける総司であった。
最初は歳さまvs総司のタラシ対決にしようと思っていたのですが
歳さまのタラシセリフが思いつかず断念(爆)
その時にWebで「粋でない人が・・・」という話を読んで
これだ!と思いつき書きました。
ちょこっとネタばれ。
<粋でない人が学問すると、野暮か気障になるらしい>
土方はニヤニヤしながらある人物に話かけた。
「おいっ総司」
「なんですか?土方さん」
「おめぇ、天性のタラシと思われてるそうじゃねぇか」
「??なんの話です??」
「どこぞの女でも泣かしたか?」
「土方さんじゃあるまいし、そんなことありませんよ」
「さすが自覚のない野暮天だけあるなぁ」
「ひどいですよぉ 野暮天なんて」
「実際、野暮天なんだから仕方ねえだろ?」
「じゃあ土方さんはどうなんです?」
「俺は粋なタラシだろ?」
そう言い、去ろうとしたがふと
「学問をすれば、気障にもなれるらしいぞ」
と謎かけのようなことを言い残していく土方。
「なぜ学問すると気障に?」
土方さんは時々分からないことを言うなぁ・・・
考えてもわからないので神谷さんにでも聞きますか。
そんなことを思い、清三郎を探す総司であった。
もう夏も終わりに近づいてきましたね~
ちょっと遅くなりましたがお盆ネタです。
<京の夏>
夏祭りも花火も今年の夏は行けなかった。
祇園祭は警備に追われてあまり見る暇もありませんでしたし。
江戸では大川(隅田川)で夕涼みがてら花火を見ましたっけ。
沖田は懐かしい思いでぼんやりと考えていた。
ああ、今日は送り火がありましたか。
神谷さんを誘ってみましょう
そう思ったがお馬で屯所にはいない。
それならばとお里の家へ向かう。
「ごめんくださーい」
「あら沖田せんせ」
「神谷さんはいますか」
「あれ?沖田先生」
休みのあいだに家まで訪れるなんて
なにかあったのかと思ったがそうではないらしい。
「送り火を見に行こうと思って」
「そういえばお盆終わりですもんね」
「一緒に行きませんか」
「・・・でもお馬」
「そないなこといわんと行ってきなはれ」
折角やしとお里さんが女子姿に仕上げてくれた。
しかし沖田先生がなんと言うであろう。
「本当にこんな格好で行ってかまいませんか?」
「これならわからないでしょうし」
「でも」
「お休みのときぐらい、いいですよ」
だってそんなに綺麗なのだから。
「支度をしたので遅くなりましたね」
「途中まで籠を使いましょう」
神谷はもったいないとは思ったが体調からも
籠を使わないと間に合わない。
「ほな、いっといでやす」
「「行ってきます」」
お里に見送られながら家をあとにし
嵐山までやってくると
もうたくさんの人が集まっていた。
「始まりますね」
「あ、」
「危ないですよ」
神谷さんが転びそうになったところに手を貸し
そのまま不自然にならないように手を繋ぐ。
「綺麗ですね」
「・・・はい」
あなたが、とつい言ってしまいそうになった。
手を繋いでいることに照れているのか
赤い顔をするあなたに見惚れている間に
鳥居の形へ火がまわり一刻ほどで終わった。
「帰りますか」
「せっかくなのでどこかでご飯でも」
もうだいぶ遅くなりましたがと神谷さんが言う。
確かに夕飯を食べ損ねた。
明日の隊務は昼からなので時間はある。
しかしこのまま部屋で二人きりになるのは気恥ずかしい。
「もう遅いですし」
「そうですか」
寂しそうな顔をする。
そんな顔をさせたくはないのに。
「そういえば今年の夏は大丈夫ですか」
「京の暑さにも少しなれました」
あなたがいつも気をつけてくれているからかもしれませんね。
それにまたあんな風に倒れるのはもうごめんです。
--あなたを守れませんから--
京の夏はまだまだ暑い。